無双むそう)” の例文
旧字:無雙
「一益の甥、滝川長兵衛とあれば、またの名を、一鬼いっきともよび、豪勇無双むそうな男だ。すぐ御本陣へ送れ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、えた動物ほど、忠勇無双むそうの兵卒の資格を具えているものはないはずである。彼等は皆あらしのように、逃げまわる鬼を追いまわした。犬はただ一噛ひとかみに鬼の若者を噛み殺した。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だから、国々から選ばれる力士も、その国で無双むそう強者つわものだったのである。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
妻の膝の上には彼が好んで着るところの黒八丈の無双むそうの羽織がひろがっていた。妻はその羽織へ刀の下げの模様に染めた平打ちの紐を着けようとして、毛ピンのあしへ通しているのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「かほどな進上物とは、おそらく世上にためしもあるまい。信長でさえ、眼に見たは初めてじゃ。この安土城の門をすら、筑前めは、狭くいたしおる。無双むそうな大気者よ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その港を、どこかといえば、しずたけを南にせおい、北陸無双むそう要害ようがいではあり商業の繁昌地はんじょうち
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わが朝にもめずらしい無双むそうな士魂の持主だ。骨でもあれば拾い取ってあがめたいが」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやそういうよりも、幕府至上のうえに立った無双むそうの才識ある現実主義者だった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豪気無双むそうな大将だけに、あくまで関羽をこのまま見のがそうとはしなかった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何しろ、刀身なかみ無双むそうな名剣にまちがいない。試してみたことがおありかの
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野に放てば立ちどころに猛虎と変じるかも知れない無双むそうの勇者とは分りきっているので、槙島の牢には、きびしい番を付けておいたが、食事その他は、秀吉の内意とあって、極めて、優遇していた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
筑後ちくご柳河やながわの人で南紀理介なんきりすけ、槍術では海内かいだい無双むそうという聞えがあった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将来天下人てんかびと兆瑞ちょうずいがお見えあそばすということ、君のおんためには死も一もうより軽しということ、それから、こんどは手まえ味噌みそで天下の野武士のぶしはわが指一本にうごくというじまん、幻術げんじゅつは天下無双むそう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)