灌仏会かんぶつえ)” の例文
主従三人お昼すぎから増上寺のお花御堂みどう灌仏会かんぶつえに出かけて、ついでのことにおなかへも供養にと、目黒の名物たけのこめしへ回り
この頃伯林ベルリン灌仏会かんぶつえ滔々とうとうとして独逸ドイツ語で演説した文学士なんかにくらべると倫敦の日本人はよほど不景気と見える。(五月二十三日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
毎年するように、花御堂はなみどうの花をんできて、灌仏会かんぶつえのお支度をしなければならないし、晩には、甘茶も煮ておかなければいけないでしょう
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
熱田神宮四月八日の花のとう剪綵花つくりばなを飾ったらしく、張州府志など迄が、これを灌仏会かんぶつえの一種の式と断定しているが、それらしい証拠もないのみならず
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
四月八日の灌仏会かんぶつえの日がきて、阿宝が水月寺へ参詣するということを聞いて、朝早く往って道中で待っていた。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
灌仏というのは、四月八日の釈迦の誕生日に寺で灌仏会かんぶつえというものを修じ、参詣人に甘茶などをくばるのである。これはその灌仏の日に寺に一人の児がいるのが人の目につく。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
今年、四月八日、灌仏会かんぶつえに、お向うの遠藤さんと、家内と一所に、麹町こうじまち六丁目、擬宝珠ぎぼうし屋根に桃の影さす、真宝寺の花御堂はなみどうもうでた。寺内に閻魔堂えんまどうがある。遠藤さんが扉を覗いて、袖で拝んで
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この年毎の灌仏会かんぶつえの行事は私の家などでも嘉例かれいの一つになっていた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「誰かと思ったら……お通さんでしたか。今、あなたの帯を縫っているところですが、あしたの灌仏会かんぶつえに締めるのでしょう」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花御堂はなみどう灌仏会かんぶつえ、お釈迦しゃかさまも裸になって、善男善女が浮かれだして、赤い信女がこっそり寺の庫裡くりへ消えて
毎年六月の花のとうの式が、熱田四月八日の例とよく似ていることを述べ、後者は灌仏会かんぶつえにして、前者は夏中の供花きょうかに起ると説いているが、単に期日が四月八日であるために
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きょうは灌仏会かんぶつえの四月八日なので、本堂の中には、菩提樹ぼだいじゅの葉で屋根をき、野の草花で柱を埋めた花御堂はなみどうができていた、御堂の中には甘茶をたたえ
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、六地蔵ともに寄進の年月はついおととしの、日もまたそろって同じ灌仏会かんぶつえのある四月八日でした。
けれど、その日はちょうど、四月八日の灌仏会かんぶつえであったし、桜も夜来の雨で、一ぺんに開き、奈良も人出がなくて、あちこち、静かに見られたのは倖せだった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四月八日は雨、そしてちょうど、灌仏会かんぶつえの日でもあった。雨をついて、車で奈良へ走る。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)