ととの)” の例文
臥床ふしどを出るや否やいそいで朝飯あさはんととのえようと下座敷したざしきへ降りかけた時出合頭であいがしらにあわただしく梯子段はしごだんを上って来たのは年寄った宿の妻であった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
用意洩れなくととのえて待ち受けていべきはずの与惣次が——? 小太郎は首を捻って、勘次ともどもまた激しく戸を打ったが、何のいらえもない。
と内藤夫人は陣容をととのえる為めに去年下半期の手当まで確かめたがった。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
種彦はどこかこの近辺に閑静で手軽な料理茶屋でもあらば久ぶり門人らと共に中食ちゅうじきととのえたいと言出すと、毎日のぞめきあるきに至極案内知ったる柳下亭種員たねかず心得たりという見得みえ
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歌ひながらに恋人は、飛ぶ蜂のつばさきらめく光のかげ、暮方の食事にと、庭の垣根の果実くだものと、白きパン、牛の乳とをととのへ置きて、いざや、より添ひて坐らんと、わが身のほとりに進み来ぬ。
Henriアンリイ Bordeauxボルドオ という人の或る旅行記の序文に、手荷物を停車場に預けて置いたまま、汽車の汽笛の聞える附近の宿屋に寝泊りして、毎日の食事さえも停車場内の料理屋でととの
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)