淡々たんたん)” の例文
俳人で大阪者といへば宗因そういん西鶴さいかく来山らいざん淡々たんたん大江丸おおえまるなどであるがこれ位では三府の一たる大阪の産物としてはちともの足らぬ気がする。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「では申しあげましょう、とるに足らぬひが事には過ぎませんが」と、正成は世間ばなしでもするように淡々たんたんとこう言った。
朝倉先生は、べつにいいわけをするような様子もなく、淡々たんたんとしてこたえた。すると、荒田老人は、ぶっきらぼうに
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
一緒になるまでは障害物を乗越えて、火花を散らしてまでも、という大変な力を出しながら、さて放電ディスチャージしてしまうと、淡々たんたん水の如く無に還るという——、面白いじゃありませんか
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
私がそれまで昔の恋人こいびとに対する一種の顧慮こりょから、その物語の裏側から、そしてただ、それによってその淡々たんたんとした物語に或る物悲しい陰影ニュアンスあたえるばかりで満足しようとしていた
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
宗十郎は淡々たんたんとして、座敷ざしきすみで試験勉強している復一の方を見てそういった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「気の毒なことじゃのう」博士の声は水のように淡々たんたんとして落付いていた。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがて、淡々たんたんと、書面の文を、口述した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、尊氏は淡々たんたんと。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)