海鳴うみなり)” の例文
証拠には、吊床——の上に戻ろうとした時、たけり狂う海鳴うみなりの音や、例の無気味なきしみ音を、はっきり身近に感ずることが出来た。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
彼は少しも立止ったり、あとをふりかえったりしないで、どんどん先を急ぐうちに、やがて遠くから海鳴うみなりの音が聞えて来ました。
足元には、白い泡をうかべた荒潮が、あるいは高く、或は低く満ち引きしています。そして海鳴うみなりのような音さえ聞えるのです。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
聞きすますと、潟の水の、みぎわ蘆間あしまをひたひたと音訪おとずれる気勢けはいもする。……風は死んだのに、遠くなり、近くなり、汽車がこだまするように、ゴーと響くのは海鳴うみなりである。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しきりと、海鳴うみなりの音が先刻さっきから胸底に騒いでいる所である。八雲は、はっとして、そこを閉めた
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大王椰子だいおうやしの葉がざわざわとゆれて、遠くの方で、かすかに、海鳴うみなりの音がしている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
あのおそろしいゴーゴン達がいるのでした! 彼等は雷のような海鳴うみなりの音で、いい気持になって、ぐっすり寝込んでいました。
北の海なる海鳴うみなりの鐘に似て凍る時、音に聞く……安宅あたかの関は、このあたりから海上三里、弁慶がどうしたと? 石川県能美郡のみごおり片山津の、直侍なおざむらいとは、こんなものかと、客は広袖どてらの襟をでて
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海鳴うみなりのように砲声がどよめいている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)