流行妓はやりっこ)” の例文
それに客愛想もいから当時の流行妓はやりっこうちには少しの貯えも有るという位、もう一人はその頃の狂歌師談洲樓焉馬だんしゅうろうえんばの弟子で馬作うまさくという男
流行妓はやりっこでもあり、そういう悲惨の死に方をしたというのに対して世間の同情もあつまって、会葬者もたくさん、なかなか立派な葬式でした。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
流行妓はやりっこになるのも、よいねえさんになるのも、お披露目ひろめに出た時、女将の目にとまって、具合よく引っぱり廻され、運の綱を握るようにしむけてくれるからである。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
一人は芸者屋の娘で、今は小滝こたきといって、一昨年おととし一本になって、町でも流行妓はやりっこのうちに数えられてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
いいえ、あれは静岡産です。浜勇はまゆうといってこの土地切っての流行妓はやりっこですよ。お気に召しましたかな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これは、この柏屋かしわやねえさんの、小芳こよしと云うものの妹分で、綱次つなじと聞えた流行妓はやりっこである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここ随一の流行妓はやりっこも、このごろはお茶を引かざるを得なくなっている晩である。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
藤助「へい、あのおさんは流行妓はやりっこでございますから、お金で身体を縛ってしまいますから」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一時はなかなか流行妓はやりっこでね。シンガポールの日本人でこてちゃんの名を知らない者はないくらいでしたよ。ほんとうの名は小鉄で、それをつづめて一般にこてちゃんと呼んでいたわけなんです。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)