洒落気しゃれけ)” の例文
旧字:洒落氣
それがこのボロ船じゃあ、万事が規則ずくめでできているし、洒落気しゃれけひとつあるじゃない。この船じゃあ、わしはなんの役にも立たない。
火夫 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
小唄の一つも聞いて見るほどの洒落気しゃれけがあるならば、何故もっと賢く適当に、独身者として大目に見てもらうような身の処し方をしなかったか
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
居酒屋や食べ物屋のごとくで彼を釣ろうとするのもあるし、呉服屋や宝石屋のごとく洒落気しゃれけでとらえようとするのもあるし、理髪店、靴店
少くとも大隈重信の法螺は、百科辞典の範疇をでないのに対して、法螺丸の法螺はたしかに百科辞典を超越した一種の洒落気しゃれけと魔力とを兼ね備えている。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ふくらっぱぎの白いところを臆面なく空中に向って展開しているような、洒落気しゃれけ満々たる女があろうとは思われないし、また、先刻の大きなわしにしてからが
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや僕も悪い。悪かった。僕にも洒落気しゃれけはあるよ。そりゃ僕も充分認める。認めるには認めるが、僕がなぜ今度この洋服を作ったか、その訳を君は知るまい」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「悪い洒落しゃれをする女だ……」と苦笑にがわらいした目明し万吉。江戸のスリ気質かたぎには、ほかの盗児にない一種の洒落気しゃれけや小義理の固いところがあると聞いていたのを思い合せて
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和泉守の狂歌であるがこんな洒落気しゃれけもあった人物ひとで、そうかと思うと何かの都合で林大学頭が休講した際には代わって経書を講じたというから学問の深さも推察される。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あまりに唐突と怪異が過ぎて、凄惨とか無残とかというよりも、場面に一脈の洒落気しゃれけが加わり、そこには家なく町なく人もなく、あるのはただ首と藤吉とを一線に結ぶ禅味だけ
伝法院の唯我教信が調戯からかい半分に「淡島椿岳だからいっそ淡島堂に住ったらどうだ?」というと、洒落気しゃれけと茶番気タップリの椿岳は忽ち乗気のりきとなって、好きな事仕尽しつくして後のお堂守どうもりも面白かろうと
洒落気しゃれけばかり強くて、物事に根気が無く、趣味が古くして、進取的気象に乏しい。