氷店こおりみせ)” の例文
隣地の町角に、平屋だての小料理屋の、夏は氷店こおりみせになりそうなのがあるのと、通りを隔てた一方の角の二階屋に、お泊宿の軒行燈のきあんどんが見える。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一、古来季寄になき者もほぼ季候きこうの一定せる者は季に用ゐ得べし。例へば紀元節、神武天皇祭じんむてんのうさい等時日一定せる者は論をたず、氷店こおりみせを夏とし焼芋を冬とするも可なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二の氷店こおりみせや西洋料理亭の煩雑はんざつな色彩が畸形きけいな三角の旅館と白い大鉄橋風景の右たもとに仕切られる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
氷店こおりみせ白粉首しろくびにも、桜木町の赤襟にもこれほどの美なるはあらじ、ついぞ見懸けたことのない、大道店の掘出しもの。流れ渡りの旅商人たびあきんどが、因縁は知らずここへ茣蓙ござを広げたらしい。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氷店こおりみせ休茶屋やすみぢゃや、赤福売る店、一膳めし、就中なかんずくひよどりの鳴くように、けたたましく往来ゆききを呼ぶ、貝細工、寄木細工の小女どもも、昼から夜へ日脚ひあしの淀みに商売あきない逢魔おうまどき一時ひとしきりなりを鎮めると
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
観世物みせもの小屋が、氷店こおりみせまじっていて、町外まちはずれには芝居もある。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)