水量みずかさ)” の例文
関ノ藤川、牧田川、相川、杭瀬くいぜ川など、関ヶ原の曠野と盆地をうねる河川は真っ赤に濁り、滔々とうとうと、泡を噛んで太い水量みずかさを押し流していた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水量みずかさの増した、河面をゆるく推進機スクリューが掻きはじめ、この神秘の男を乗せた、船尾灯が遠く雨脚のなかに消えてゆくのだった。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
たっぷりと水量みずかさがあって、それで粘土質のほとんど壁を塗ったような深い溝を流れるので、水と水とがもつれてからまって、みあって、みずから音を発するのである。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
思い出は路ばたの石ころにも満ちている。雨に水量みずかさを増した早瀬も不倫の物語を笑うように流れている。風もわたしの耳のそばで、私たちの不義を大きくはやし立てていた。
自分と自分が哀れになって、彼は根限りわめいた。後からあとからと大粒な涙がこみ上げて来た。それが河へ落ちた。水量みずかさが増した。浪となってひたひたと与惣次の足を洗った。
山を越え、河を渡り、どうして京都みやこへ行かれましょう。一杯になった壺の涙を、湖水の中へ捨てました。と琵琶湖の水量みずかさが、一時に増したと申します。で小舟はユラユラと、沖へ出かけて行きました
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
河はもうこの一降ひとふりで水量みずかさを増していた。濁流が瀬の石に白い泡を噛んでいる。五条まで下がれば橋はあるが、範宴は浅瀬を見まわしてそこを渡渉こえて行こうとする。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜の大雨に水量みずかさを増した掘割が、明けやらぬ空を映してどんよりよどんでいる。
でまた湖水へけました。水量みずかさが増したと申します
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)