歴然れっき)” の例文
酒井俊蔵と云う父親と、歴然れっきとした、謹(夫人の名。)と云う母親が附いている妙の縁談を、門附風情が何を知って、周章あわてなさんな。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
低い天井てんじょうの白茶けた板の、二た所まで節穴ふしあな歴然れっきと見える上、雨漏あまもりみをおかして、ここかしこと蜘蛛くもあざむすすがかたまって黒く釣りをけている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある金剛菩薩の歴然れっきとした法身の痕跡を残して、高名な修法僧は無残にも裂き殺され、その側に尼僧の一人が、これもまた不思議な方法で絞り殺されているので御座います。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
有為ゆういの士を心服させることのできないものが、この折助を使用する。歴然れっきとした旗本でありながら神尾主膳は折助を使用して、人をおとしいれなければならなくなったとは浅ましいことです。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
のちにまたあらためて、歴然れっきとした媒妁人なこうど立てる。その媒妁人やったら、この席でこないな串戯わやくは言えやへん。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、それには歴然れっきとした、明証あかしがありおった……。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「なぜって、私にはもう歴然れっきとした女房があるんです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)