槓杆こうかん)” の例文
文化の擁護、知識の健全性の防衛と云う一般の要求が能動精神の提唱される一つの社会的雰囲気として槓杆こうかんの役目をした。
昭和の十四年間 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「うむ、これだよ!」と呟くと、数間離れた地面の一箇所、そこにニョッキリ突起とっきしている、赤錆びた槓杆こうかんを引っ掴んだ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水甕みずがめを割る力を持っているのだから、これを利用して槓杆こうかん線条せんじょうのメカニズムを考案すれば、深夜、最も温度の下ったときに、天井から短剣を落としたり
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それはちょうど鶴のような恰好をした自働器械オートマトンである。そのくちばしが長いやっとこばさみのようになって、その槓杆こうかんの支点に当るねじびょうがちょうど眼玉のようになっている。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自然が「精神に啓示しないものを、汝は槓杆こうかん捩子ねじをもつてむりやりに取つて来ることはできぬ。」
ゲーテに於ける自然と歴史 (新字旧仮名) / 三木清(著)
しかれども四角四面、慣例格式の走りたる社会を活動せしむる槓杆こうかんを求めば、吾人ごじん猶予ゆうよなく指を賄賂に屈せずんばあらず。かつて藤田東湖が幕府の能吏のうり矢部駿河守との対話をしるしたるを見るに、曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
槓杆こうかんの、片手は軽い。だが、大斧の、威力は籠る。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
其時そのとき両脚りやうあし槓杆こうかんとし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
槓杆こうかんを動かしたに相違ない。そこで湛えられた湖水の水が、森林をひらいて流れたのであろう。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
数万の烟筒は煙を吐いてために天日を暗からしめ、雲のごとき高楼、林のごとき檣竿しょうかん錐鑿すいさく槓杆こうかん槌鍛ついたんの音は蒸気筒の響き、車馬轣轆れきろくの声とともに相和して、晴天白日雷鳴を聞くがごとくならん。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
槓杆こうかん一本を動かしさえすれば、大池の水がほとばしり、流れ出るのでございます」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)