槍玉やりだま)” の例文
事実私は読まなかったが、或る雑誌批評で、この千里眼が槍玉やりだまに上り、時局をわきまえないとか何とかいう御叱おしかりを受けたそうである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
そういう場合、いつも槍玉やりだまに上るのは一寸法師の緑さんだった。下品な調子で彼を読込んだ万歳ぶしが、次から次へと歌われた。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
言はざれば主税之助は彌々いよ/\怒り此奴こやつ勿々なか/\澁太しぶとき女なり此上は槍玉やりだまあげて呉んずと云ひつゝ三間の大身の槍を追取さや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも頑強がんきょうに応じないと、あとから立つ人の演説の中で槍玉やりだまにあげられる。迷惑な事である。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
進級生たちに何かと難癖なんくせをつけて見たいだろうし、その進級生全部の犠牲になって槍玉やりだまにあげられたのは清国留学生の周さんだ、と言えない事もない状態であったのである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「さすれば、こっちは高見たかみの見物、伊那丸の首は、三河勢みかわぜい槍玉やりだまにあげてくれるわけだな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三代目あたりからそろそろくずれ出すのではないかという諸侯の肝を冷やすために、また自分自らも内心実はその危険を少なからず感じていたところから、さしあたり切支丹キリシタン槍玉やりだまにあげて
今夜客間に寝ている源次郎めがちゅう二階に寝ているお國の所へ廊下伝いに忍びくに相違ないから、廊下で源次郎を槍玉やりだまにあげ、中二階へ踏込ふみこんでお國を突殺つきころし、自分は其の場を去らず切腹すれば
どうして私のようなあるか無きかの所謂いわゆるルンペン的存在のものを特に選んで槍玉やりだまに挙げたのでございましょうか、やっぱり永年外国で学問をして来て大学の教授などしていても
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その歌詞の中には、先生の名も他の多くの先生がたと一度に槍玉やりだまにあげられていた。そうして「いざあばれ、あばあれ」というのがこの愉快な歌のリフレインになっていたのである。
田丸先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)