楯突たてつ)” の例文
その総本家そうほんけの権能はひじょうに古くからのもので、これに楯突たてつくことは世間からも許さないが、多くの氏々の連合にはそういう中心の力がよわい。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それに昇は花で言えば今を春辺はるべと咲誇る桜の身、此方こっち日蔭ひかげの枯尾花、到頭どうせ楯突たてつく事が出来ぬ位なら打たせられに行くでも無いと、境界きょうがいれてひがみを起し
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
主家を退転して三万七千石の大名に楯突たてついてまでも、志賀家の血筋を護り通そうとするのでしょう。
にわかに関白に楯突たてつこうようはあるまいが、云わば秀吉は家来筋だ、秀吉に何事か有らばが主人が手を天下に掛けようとしたとて不思議は無い、男たる者の当り前だ
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼奴あやつは元来詐欺賭博いかさま入獄いろあげして来た男だけに、することなす事インチキずくめじゃが、そいつに楯突たてついた奴は、いつの間にかあなの中で、彼奴あいつの手にかかって消え失せるちう話ぞ。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こいつら素町人すちやうにんの分際で、歴々の御旗本衆に楯突たてつかうとは、身のほど知らぬ蚊とんぼめ等。それほど喧嘩が売りたくば、殿様におねだり申すまでもなく、云値いひねでおれ達が買つてやるわ。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
晋に入った衛の太子は、此の国の大黒柱たる趙簡子ちょうかんしの許に身を寄せた。趙氏がすこぶる厚遇したのは、此の太子を擁立することによって、反晋派たる現在の衛侯に楯突たてつこうとしたに外ならぬ。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
……けれど木下様のおはなしを聞いてみれば、そんな金に眼をくれたり、山淵様の口にのって、貴方様に楯突たてついたのは、まったく自分の身を亡ぼすように努めているようなものでございます。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主家を退轉して三萬七千石の大名に楯突たてついて迄も、志賀家の血筋を護り通さうとするのでせう。
「やい、やい、こいつ等。素町人の分際で、歴々の御旗本衆に楯突たてつこうとは身のほど知らぬ蚊とんぼめ。それほど喧嘩が売りたくば、殿様におねだり申すまでもなく、いい値でおれたちが買ってやるわ」
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)