染付そめつけ)” の例文
忌部焼いんべやき布袋ほていの置物にこんなのがよくある。布袋の前に異様の煙草盆たばこぼんを置く。呉祥瑞ごしょんずいの銘のある染付そめつけには山がある、柳がある、人物がいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青絵というのは、染付そめつけのことで、呉須土ごすどいた南画なんがめいた構図で、よく寒山拾得かんざんじっとくのような人物や山水さんすいなどが、達筆に密画でなく描かれていた。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それがたとえていえば、小川に洗われて底に沈んでいる陶器の破片が染付そめつけ錦手にしきでいろどられた草木花卉かきの模様、アラベスクの鎖の一環を反映屈折させて
轆轤ろくろにかかる彼の姿は、鬼のように壁へ映った。そして、夜をつみ、日をついで、釉薬ゆうやく染付そめつけの順に仕事が進んだ。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薔薇ばらの花を刺繍ぬいにした籃入かごいりのピンクッションもそのままであった。二人しておついに三越から買って来た唐草からくさ模様の染付そめつけ一輪挿いちりんざしもそのままであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何に使われたかは分らぬが、いて言えば、紡織とか染付そめつけとかそういうような工業に一時利用せられたのかとも思われる。そうでなければその他に何か薬用があったものか。
それは太守たいしゅも、刈屋頼母かりやたのもも、まったく望みを絶っていた、増長天王ぞうちょうてんのう陶器像すえものぞう。しかも一点のきずなく彫琢ちょうたく巧緻こうち染付そめつけ豪華ごうか絢麗けんれいなこと、大川内おおかわちの山、開いてこのかた、かつて見ない色鍋島いろなべしまの神品。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
染付そめつけの絵を見ていると、たましいは唐の国へ飛んで遊んでいた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)