李太白りたいはく)” の例文
「大地の歌」は李太白りたいはく王維おういの詩の独訳からヒントを得て作曲した長大な歌曲だ。これはおそらくマーラーのレコード中の傑作であろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
シェクスピイアも、ゲエテも、李太白りたいはくも、近松門左衛門も滅びるであろう。しかし芸術は民衆の中に必ず種子を残している。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
求めないか? 何故、山などに住んでいるか? 私の心意気は千年の昔、唐の李太白りたいはくうたっている。立派な言葉で吟っている
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(それの数値が大であればあるほど、二者の加算たる和が大きくなる。)例えば芭蕉や、ゲーテや、ニイチェや、ランボー、李太白りたいはくやが、ことごとく皆そうであった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
牡丹亭で喋々喃々ちょうちょうなんなんの光景を、詩人の李太白りたいはくよだれを垂らして牡丹の葉蔭から見ている絵なぞがあって、支那一流の大甘物あまものだが、その中でも、呉青秀に関する記述の冒頭だけは
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おや、苗字はわたしとおなじなのね。わたしはよいが、李太白りたいはく(唐朝の大詩人)さまは、さぞ……ホ、ホ、ホ、ホ」と、その花顔かんばせたもとの蔭につつみながら「ご迷惑がッていらっしゃるでしょうね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李太白りたいはく」だって僕には涙の出るほど有難い書物です。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
赤木は昔から李太白りたいはく贔屓ひいきで、将進酒しょうしんしゅにはウェルトシュメルツがあると云うような事を云う男だから、僕の読んでいる本に李太白の名がないと、おおいに僕を軽蔑した。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、李太白りたいはく杜少陵とせうりやうの訳詩を見ても、訳詩とはどうも受け取れない。まづ八分までは女史自身の創作と心得て然るべきであらう。ユニス・テイツチエンズはずつと新しい。
パステルの竜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
月明りのほのめいた洛陽らくようの廃都に、李太白りたいはくの詩の一行さえ知らぬ無数の蟻の群をあわれんだことを!
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人の宮人は彼の前に、石竹せきちくの花の色に似た、絹の屏風を開いてゐる。一人の嬪妃ひんきひざまづきながら、彼の硯を守つてゐる。その時泥酔した李太白りたいはくは、天上一片の月に寄せる、激越な詩を屏風に書いた。
パステルの竜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)