木実このみ)” の例文
旧字:木實
窓硝子を洩れる真昼の冬の日に照らされて、陽炎かげろうのように立ち迷う湯気のなかに、黄いろい木実このみの強い匂いがこもっているのもこころよかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一、四季の題目にて花木かぼく花草かそう木実このみ草実くさのみ等はその花実かじつもっとも多き時をもつて季と為すべし。藤花、牡丹ぼたんは春晩夏初を以て開く故に春晩夏初を以て季と為すべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かう語りながら、カテリーナは手巾ハンカチを取り出して、自分の腕に眠つてゐる我が子の顔を拭つた。その手巾には彼女の手づから紅い絹絲で木の葉と木実このみ刺繍ぬひとつてあつた。
木実このみは誘うものならず。5160
飲み食いは時を定めず、好んで木実このみや栗を食うが、もっとも犬をたしなみ、啖い殺して血を吸うのである。ひるを過ぎると飄然として去り、半日に数千里を往復して夕刻には必ず帰って来る。
みたる木実このみうべに。
勿論もちろん、普通の人とは違って、山に馴れたる彼は寝床や食物には困らなかった。岩を枕にして眠った、木実このみを拾って食った。くして日をくらあいだに、塚田巡査に一度見付けられたが、幸いに逃れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)