日蓮宗にちれんしゅう)” の例文
音楽の最も簡単なものを取ってみると、それは日蓮宗にちれんしゅうの太鼓や野蛮人の手拍子足拍子のようなもので、これは同一な音の律動的な進行に過ぎない。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
日蓮宗にちれんしゅうの事だから、江戸の市人いちびとの墓が多い。知名の学者では、朝川善庵あさかわぜんあん一家いっけの墓が、本堂の西にあるだけである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
椿岳の大作ともいうべきは牛込の円福寺の本堂の格天井ごうてんじょう蟠龍はんりょうの図である。円福寺というは紅葉の旧棲たる横寺町の、との芸術座の直ぐ傍の日蓮宗にちれんしゅうの寺である。
元来温井検校の家は日蓮宗にちれんしゅうであって検校を除く温井一家の墓は検校の故郷こきょう江州ごうしゅう日野町の某寺にある。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
藤掛ふじかけなにがしという日蓮宗にちれんしゅうの信者で、頭のはげた隠居さんが一そろい九冊ばかりの、あい色の表紙のついた、こころもち小形の和本を奥の戸だなからさがしだしてきて
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日蓮宗にちれんしゅう小伽藍しょうがらんで、住職は老年で寝たきりだし、若い住僧が二人して維持していたが、戦乱つづきで、村は疲弊ひへいしているし、檀家だんかも離散するばかりなので、形こそ違うが
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また永田町首相官邸かんていの付近には、青年団体や日蓮宗にちれんしゅうの信者などがしかけて、ラッパをき、太鼓たいこを鳴らし、叛軍のために万歳ばんざいを唱えたが、どこからも制止されなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
伯父夫婦が仏壇の前で一心不乱に団扇うちわ太鼓や拍子木を叩いて御題目を唱えているではありませんか。一体彼等の一家は狂的な日蓮宗にちれんしゅうの信者で、一にも二にも御祖師様おそしさまなんです。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お岩の家は日蓮宗にちれんしゅうであった。そこへ伊右衛門が入って来た。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)