なす)” の例文
彼はほんの一瞬間、乾いた彼の唇の上へこの蝶のつばさの触れるのを感じた。が、彼の唇の上へいつかなすつて行つた翅の粉だけは数年後にもまだきらめいてゐた。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
唇から付いたんなら、もう少しうつすり付きますが、筒の口は紅が笹色さゝいろになつてゐるほど付いてるでせう。それは、紅皿から指で筒の口へなすつたものに相違ありません
おのれが手に塗付ぬりつけ笈笠おひがさへ手の跡を幾許いくつとなくなすり付又餞別にもらひし襦袢じゆばん風呂敷ふろしきへも血を塗てたる衣服いふくの所々を切裂きりさきこれへも血を夥多したゝか塗付ぬりつけたれが見ても盜賊たうぞくに切殺れたるていこしらへ扨犬の死骸しがいおもり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
唇から付いたんなら、もう少しうっすり付きますが、筒の口は紅が笹色になっているほど付いてるでしょう。それは、紅皿から指で筒の口へなすったものに相違ありません