捨身しゃしん)” の例文
私心我慾、小功の争いなど、きたないくさすな。勝たば、あましたのため、捨身しゃしん奉公、負くるも、天が下、恥なき武士もののふの死に方せよや
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捨身しゃしん菩薩がもとの鳥の形に身をなして、空をお飛びになるときは、一揚いちようというて、一はばたきに、六千由旬ゆじゅんを行きなさる。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
現世の昏迷こんめいに身を投じ、救いも解決もなく、ただ不安に身をよこたえられたその捨身しゃしん故にこそ菩薩として仰がるるのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あはれ、殊勝な法師や、捨身しゃしん水行すいぎょうしゅすると思へば、あし折伏おれふ枯草かれくさの中にかご一個ひとつ差置さしおいた。が、こいにがしたびくでもなく、草をしろでもない。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すなわ化身けしんの所作である。化身とは捨身しゃしんである。苦痛にちがいない。慈悲の根底にある無限の忍耐、云わば人生を耐えに耐えたあげく、ふとあの微笑が湧くのかもしれぬ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
私にはそれが復讐ふくしゅうの息吹のごとくにも思われ、また荒々しい捨身しゃしんへの示唆しさのごとくにもみえた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)