押問答おしもんどう)” の例文
それから二人はしばらく押問答おしもんどうをしていたが間もなく一人ともつかず二人ともつかず家のなかにはいって来てわずかに着物きもののうごく音などした。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
で、押問答おしもんどうの末、結局治良右衛門その他の云い分が通り、奇妙なカーニバル祭は兎も角挙行されることになった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それからしばらく、チャンウーと猫女の押問答おしもんどうをする声がつづいていたが、やがて、猫女のピストルに脅迫きょうはくされて、チャンウーは奥の一間へ入っていった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
渋江氏と周禎がかたとの間に、幾度となく交換せられた要求と拒絶とは、押問答おしもんどうの姿になった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おれは五十人あまりを相手に約一時間ばかり押問答おしもんどうをしていると、ひょっくり狸がやって来た。あとから聞いたら、小使が学校に騒動がありますって、わざわざ知らせに行ったのだそうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芝居しばいのつもりだがそれでもやはり興奮するのか、声になみだがまじる位であるから、相手はおどろいて、「無茶いいなはんナ、何もわてはたたかしまへんぜ」とむしろ開き直り、二三度押問答おしもんどうのあげく
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
霧が雲がと押問答おしもんどうなぞのかけツこ見たやうなことをして居るのは、れつたくつて我慢が出来ぬ。そんなまだるつこい、気の滅入めいる、糸車なんざ横倒しにして、面白いことを聞かしておくれ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二人はしばらく押問答おしもんどうした。女主人は買わぬつもりでもないらしく
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
自分の枕許まくらもとにピタリと座りながら、「もしもし」と揺起ゆすりおこそうとするけれど、男は寝ながら黙って、ただ手で違う違うと示しながら、ややしばしその押問答おしもんどうをやっていたが、そのあいだの息苦しいといったら
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
妙な押問答おしもんどうになって来た。夫は部屋の正面の壁に沿って置かれた箪笥だといい、妻は左側面の壁に沿って置かれたそれだと主張する。両人の言い分の間には九十度の差異がある。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こりゃ、てっきり化けて出たのだと思い、一同しばらくはりつきませんでしたが、いろいろ観察したり押問答おしもんどうをしているうちに、どうやら生きている梅子らしい気がして来ました。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しばらく押問答おしもんどうをしていたが、いったい、どれくらいで折れあったのか、それから間もなく骨董商の店をでていく立花先生の顔色をみると、いかにもうれしそうな微笑がうかんでいた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)