折屈おりかが)” の例文
それに本当の跡取なら、少々に焦けていても、言葉遣いや折屈おりかがみが下手でも、すぐ小松屋へ伴れ込むのが本当じゃないか。
「あら。」と君江はわずかに顔をもたげながら、起直りもせず、仰向あおむきにたまま両腕をひろげ、木村が折屈おりかがむのを待って、ぐっと引寄せながら、「わたし、夢を見ていたのよ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まると、折屈おりかがみのある毛だらけの、の恐るべきあしは、ひとひとうごめき始めて、睫毛まつげを数へるが如くにするので、かねて優しい姉の手に育てられて、た事のない眉根まゆねを寄せた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若い男は竜之助の方に向き直り、倉卒そうそつの場合ながら折屈おりかがみも至って丁寧であります。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
線の美しい細面ほそおもて、情熱的な大きな眼、わななく紅い唇、町娘らしく折屈おりかがみも尋常で、赤い袖口から出た手の可愛らしさなどはたとえようもありません。