打顫うちふる)” の例文
よろづの物われをまどわしわれを疲らす。く雲軽く打顫うちふるひ、慾情の乱れ、ゆるやかなる小舟の如く、しめやかなる夜に流れきたる。
得忘れぬ面影にたりとはおろかや、得忘れぬその面影なりと、ゆくりなくも認めたる貴婦人のグラス持てる手は兢々わなわな打顫うちふるひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そは、かずかずの薔薇さうび打顫うちふるふいみじき花の姿を
失楽 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
宮はたちまち全身の血の氷れるばかりの寒さにへかねて打顫うちふるひしが、この心の中をさとられじと思へば、弱る力を励して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
食卓にひじつきて、さゝやかなる料理の皿もそのままに、二人ともども思ひに沈めば、言葉もなくだ折々に、恋人は、吹く風の冷き吐息に打顫うちふるふ、あらはなるの腕を、わが唇の上によこたへき。
あし打顫うちふるひ打顫ひ、胸は今にも裂けぬべくとどろくを、さとられじとすればなほ打顫ひ猶轟きて、貫一が面影の目にむばかり見ゆる外は、生きたりとも死にたりとも自ら分かぬ心地してき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
打顫うちふるふ鈴ののごとさわやかひびきは深く優しき声よ。