打附ぶつか)” の例文
三ツばかり、どうん、どうん、と屋根へ打附ぶつかったものがあった……おおきな石でも落ちたようで、吃驚びっくりして天井を見上げると、あすこから、と言わしっけ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くわえたまんま、待てよ、どっこい、と言うたびに、煙管きせる打附ぶつかりそうになるので、抱かれたは、親仁より、余計にひたいしわを寄せて、雁首がんくびねらって取ろうとする。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「先方御親父しんぷが、府会議員とごわすれば、直接に打附ぶつかって見るも手廻しが早いでごわす。久しく県庁に勤めたで、大なり、小なり議員を扱う手心も承知でごわす。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いじゃねえか、おたげえだ。こんな処へ来て何も、向う様だって遠慮はねえ。大家様の隠居殿の葬礼ともれいに立つとってよ、町内が質屋で打附ぶつかったようなものだ。一ツ穴の狐だい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今のきゃあ!で転倒てんどうして、わっ、と云うて山の根から飛出す処へ、胸を頭突ずつきに来るように、ドンと嘉吉が打附ぶつかったので、両方へ間を置いて、この街道の真中まんなかへ、何と、お前様
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたかも浪の打附ぶつかって様々に砕くるのが、あさひに輝き、夕陽ゆうひに燃え、月にあらわれ、時雨にかくるる、牡丹ぼたんの花に、雌雄の獅子ししの狂うさまを自然に彫刻きざんで飾ったような、巌を自然の石垣は
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やどでもついこの間、窓を開けて寝られるから涼しくっていてって、此室ここふせりましてね、夜中に戸迷とまどいをして、それは貴下あなた、方々へ打附ぶつかりなんかして、飛んだ可笑おかしかったことがござんすの。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黄声きなこえを発して、どさり、と廊下の壁に打附ぶつかりながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)