打悄うちしお)” の例文
打悄うちしおれた、残んの嫁菜花よめなの薄紫、浅葱あさぎのように目に淡い、藤色縮緬ちりめんの二枚着で、姿の寂しい、二十はたちばかりの若い芸者を流盻しりめに掛けつつ
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞いてみれば、敢えて、盛綱の罪というのでもないので、何で彼が面目なげに打悄うちしおれているのか、その愚直さがおかしくなった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜になって、息子が山荘庵の地主から使つかいが来て、呼び出されて行ったが、二時間ばかりすると打悄うちしおれて帰って来た。
麦の芽 (新字新仮名) / 徳永直(著)
と兵馬はいいかけて、また打悄うちしおれてしまいます。実際、今の兵馬の場合は金の問題で、怨みもない人をあやめようと決心を起したのも、せんじつめればそれです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と二ツいって二ツうなずいた、丹平の打悄うちしおれた物腰挙動ふるまい、いかにもいかにも約束事、と断念あきらめたような様子であった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と茶盆に眼を着け、その蓋を取のけ、ひややかなる吸子きゅうすの中を差覗さしのぞき、打悄うちしおれたる風情にて
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と慶造が勇むに引代え、若山は打悄うちしおれて、ありしその人とは思われず。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「結構なんでございます、」と、また打悄うちしおれておもてを背ける。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「…………。」黙ってこれも打悄うちしおれる。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)