手近てぢ)” の例文
手近てぢかな茶店で休んだのだが、彼がだしぬけに言いだした言葉は、あなたには美しい令嬢達のお友達が数えきれないほどお有りでしょうね。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
もし手近てぢかなれいしければ、小規模しようきぼではあるけれども、浦賀海峽うらがかいきよう左右さゆう兩岸りようがんげることが出來できる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
仮にあの材料の石類がみな手近てぢかにあったとしても、あれをみがって穴をあける技術が備わるまで、頸に玉を貫いて掛ける風習が、始まらずに待っていたか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先ず手近てぢかの、グアム島を占領して、これで西太平洋の制海権を収めると、いよいよ艦隊は、最後の一戦をまじえる準備として、南洋群島へ引上げ、待機の姿勢をることとなった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手近てぢかな所で農奴制の廃止とか、祖国の解放とか、政治とか、美とか、或いは単に酒とかを目ざした作家もあり、高遠な所で神とか、死後の生活とか、人類の幸福とかを目ざした作家もあるが
ブレーメンかキール軍港ぐんこうのあたりまで行かなければ満足しないのか、それともドイツの占領地帯で、お手近てぢかのドーヴァ海峡かいきょうを越えてきゅうフランス領のカレーあたりへ上陸しただけでも差支さしつかえないのか