手端てさき)” の例文
夕陽の落ちたばかりの長良川ながらがわかわらへ四人づれ鵜飼うかいが出て来たが、そのうちの二人は二羽ずつの鵜を左右の手端てさきにとまらし、あとの二人のうちの一人はを肩にして
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わかい男が松明たいまつけてそのあかりまないたの上におとしていた。顎髯の男は魚の腹へ庖丁がとおったので、手端てさきをさし入れてはらわたを引きだした。と、その中からころころと出たものがあった。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
愛卿は趙を送って岸へ出て、離れて往く舟に向って白い小さい手端てさきを見せていた。
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
……黄いろな夕陽の光が松原の外にあったが春の日のように空気が湿っていて、顔や手端てさきの皮膚がとろとろとして眠いような日であった。彼は松原に沿うた櫟林くぬぎばやしの中を縫うている小路こみちを抜けて往った。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いや、どういたしまして、私は獣でも来て嘗めたと思いましたから、払い除ける拍子に、何か手端てさきに触りましたから、一生懸命に掴んで見ますと、それがお嬢さんの手でした、私こそ寝ぼけてて、お嬢さんを
狼の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
源の手端てさきに少女のほっそりとした手が触れた。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女の眼はからみあっている哲郎の手端てさきへ来た。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)