手形てがた)” の例文
「お前なら、顔が手形てがただ、何も調べはいらないが、いったい何処へ行ったのだ。こんどの旅はまた、ばかに長かったじゃないか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうも手形てがたも持たないでいなかを歩くなんというのはとんだばかな子どもたちだ。わたしは市長にたのんで、おまえたちにこの旅行券りょこうけんを出してもらった。
と吉左衛門は言って、一枚の手形てがたを半蔵の前に置いた。関所の通り手形だ。それには安政三年十月として、宿役人の署名があり、馬籠宿の印が押してある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平仮名と片仮名とをくらべて、市在しざい民間の日用にいずれか普通なりやとたずぬれば、平仮名なりと答えざるをえず。男女の手紙に片仮名を用いず。手形てがた、証文、受取書にこれを用いず。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あづかりし手形てがたを出せと店先みせさきにて談事だんじければ彌太郎も今は堪忍かんにん成難なりがた其方そなたよりの訴訟うつたへまたず此方より訴へんと云時いふとき又々下男長助又七をたづね來り夜前やぜん清三郎が云ひし四日市のことをはなしけるにぞ尚々なほ/\遺恨ゐこん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女は手形てがたなしには関所をも通さないという。しかし木曾路を通るごとに女の乗り物を用意させ、見る人が見ればそれが正式な夫人のものでないのも彦根ひこねの殿様であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
熊蔵くまぞうが、手形てがたを書いてやろうかと考えていると、雁六がんろくは、およしなさい、もし下手へたなまわし者でもあって、うらをかかれると大へんですぜ——というような目まぜをした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫は重疊ちようでふ何分にも御頼み申とて引合ひきあはせしに大いに幸之進が心にかなひ母子共引取て大坂に差置さしおき不自由なき樣に金銀を送り半年ばかり世話せしにはや主人の供にて江戸へくだるに付き母子にも路金ろぎん并びに手形てがた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、黒装束くろしょうぞくのさしだした手形てがたをみて、伊那丸いなまるはいよいよふしぎにたえられない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その手形てがたにおつかまり下さい」