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あわただ
ふりがな文庫
“
惶
(
あわただ
)” の例文
立山の絶頂では、
室堂
(
むろどう
)
をすぐ脚の下に眺めながら、なぜあのように淋しい頼りない思いに堪え兼ねて
惶
(
あわただ
)
しくかけ下りたのか。
秩父のおもいで
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
こんな風に書いていると長い様だが、舞台が明るくなってから、怪物の姿が木戸口の外に消えるまで、
僅々
(
きんきん
)
二三十秒の
惶
(
あわただ
)
しい出来事であった。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
拡りかたは如何にも
惶
(
あわただ
)
しかったが、程なくその奔走の姿も新しい看察を伴ってみられるようになり、現在ではあれこれ表面的な題材に拘泥せず
人生の共感:求められる文学について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
良吉の歸つてゐる間入學試驗の準備を怠つてゐたので、最早小説など讀み耽つてはゐられなかつた。上京までの日數を數へると心が
惶
(
あわただ
)
しかつた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
わたしはまた湯に入つて後頭部を湯槽の縁に載せ、いまあけたガラス戸の方に向つて、出て行く湯氣、入つて來る霧の
惶
(
あわただ
)
しい姿を見るともなく仰いでゐた。
湯槽の朝
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
▼ もっと見る
こう云って男のざらざらした手が、私を掴んで、
惶
(
あわただ
)
しく俥の上へ乗せた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
明智は少女の意識が恢復するのを待って、
惶
(
あわただ
)
しい舟の上の訊問を始めた。「君が令嬢を殺したのは、英国にいる千秋さんの為だね。そうだろう」
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
着いた時はもう日暮で、引き返すとすると非常に
惶
(
あわただ
)
しい気持でその日の終列車に乗らねばならなかつた。
渓をおもふ
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
後を振り返って部屋の隅の寝台の方を見たり、そんな事を何遍か繰返していたが、その時、母屋の方から廊下伝いに
惶
(
あわただ
)
しい人の足音が聞えて来た。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
十七八年の間に二三度帰国はして居るが、いつも
惶
(
あわただ
)
しい時間であったり、その花の咲く季節でなかったり、心ゆくまでそれに向うということを一度もようしていない。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
自動車が科学陳列館へ着くと、宗像博士と中村捜査係長とは、陳列館の主任に事情を話し、その案内で、三階全体を占める衛生展覧会場へ、
惶
(
あわただ
)
しく昇って行った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その笑い顔のまま、彼女は、丁度網にかかった鼠の様に、
惶
(
あわただ
)
しく、みじめに、美術館内を駈け廻った。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そう思うと、彼は
惶
(
あわただ
)
しく腰の辺を探って見ました。どうも無いようです。彼は益々慌てて、身体中を調べました。すると、どうしてこんなことを忘れていたのでしょう。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
水面と金網の上部とがスレスレになると、鼠は薄赤い
吻
(
くちさき
)
を、
亀甲
(
きっこう
)
型の網の間から、出来る丈け上方に突き出して、悲しい呼吸を続けた、悲痛な
惶
(
あわただ
)
しい鳴声を発しながら。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わしは夢中になって、
惶
(
あわただ
)
しく
袂
(
たもと
)
に手をやった。いつもそこにマッチが入っているからだ。ところが、アア、何ということだ。神様、神様。わしはどうしてこうまで不幸なのだ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
惶
(
あわただ
)
しく一つの窓にかけ寄って、外の夕闇を覗いたので、やっと事の仔細が分った。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
博士は何を思ったのか、中村警部の腕を取らんばかりにして、
惶
(
あわただ
)
しく促すのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大宅も相手のただならぬ様子に引き入れられて、
惶
(
あわただ
)
しく聞き返した。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
黒川先生が、
惶
(
あわただ
)
しく聞返された。先生のお声はひどく震えていた。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
博士は云い捨てて、
惶
(
あわただ
)
しく迷路の彼方へ遠ざかって行った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雷蔵の
惶
(
あわただ
)
しい声が聞えて来る。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
治良右衛門が
惶
(
あわただ
)
しく聞き返す。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、さも
惶
(
あわただ
)
しく云うのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
惶
(
あわただ
)
しく囁いた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
惶
漢検1級
部首:⼼
12画
“惶”を含む語句
愴惶
恐惶
驚惶
匇惶
蒼惶
恐惶謹言
大恐惶
誠惶誠恐
惶々
恐惶頓首
惶急
誠恐誠惶
臣誠惶誠恐死罪死罪
惶畏
惶根尊
惶根
惶懼
惶恐
倉惶
惶也
...