むごた)” の例文
旧字:
これが最後だというので百円れてやったところ、素直に帰ってゆきました。そのときは、よもやこんなむごたらしいことになろうとは思いませんでした。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、先刻さっきの、不可思議な様子を考えてみると、恐ろしい事に、この可愛いい少女は、このむごたらしい血の滲んだ傷に、残虐な魅力を、舐めたい衝動を、感じたのかも知れない。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それを目がけて漁夫たちは有る限りのを黙ったままでひたぎに漕いだ。その不思議な沈黙が、互いに呼びかわすむごたらしい叫び声よりもかえって力強く人々の胸に響いた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
けたゝましく音を立てて燃える松明の光は、一しきり赤くゆらぎながら、忽ち狭いはこの中を鮮かに照し出しましたが、𨋳とこの上にむごたらしく、鎖にかけられた女房は——あゝ、誰か見違へを致しませう。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一夜の中に此の二人の生命がむごたらしく失われてしまったのです。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
「な、なんというむごたらしいことをする悪魔! どこもかも、切っちまって……」
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)