情人じょうじん)” の例文
対手さき懺悔ざんげをしたんですが、身分を思うから名は言いますまい。……貴婦人は十八九で、もう六七人情人じょうじんがありました。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春江の客や情人じょうじんの探索が、しらみつぶしに調べられて行った。岡安巳太郎や、岩田の京ぼんも、調べられた一人だった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると、青葉の間に壮い男の顔があって、じっと女の顔を見つめた。それは、その女のもとの情人じょうじんで、先年病死した男の顔であった。女はびっくりして倒れようとした。
男の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すすげるようにして早口に物を云う。訴えるような、口説くどくような、わびを入れるような、情人じょうじんの死を悲しむような——とうてい普通の驚愕きょうがくの場合に出る、鋭くって短い感投詞かんとうしの調子ではない。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それから彼女には情人じょうじんだろう。」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鈴江は春江を殺しただけではなく、春江の情人じょうじんたる岡安を完全に手に入れ、岡安も春江のことなどを忘れてしまったかのように鈴江と喃々喋々なんなんちょうちょうの態度をとった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
桃枝は学士の内妻ないさいに等しい情人じょうじんだった。彼は手紙をたたむと、ポケットへねじこんだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鈴江は自分のれている岡安と情人じょうじんたる春江とのよい仲に極度きょくど嫉妬しっとをおこし、二人の逢瀬おうせ度々たびたび屋根裏の物置で行われているのを知ったもので、とうとうたまりかねて、春江を殺す決心をした。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)