悟入ごにゅう)” の例文
この辺より悟入ごにゅうするも可なり。また成句を用ゐざるもただ目前の景物を取りて一列に並べたるばかりにても俳句にならぬ事はあらじ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
驚くもの恐れるもの、もがくもの泣き叫ぶもの、そうして冷やかに傍観するもの、又突然悟入ごにゅうするもの、しかし義哉の心持は、いずれにもはまっていなかった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「今もって、未熟、不覚、いつまで、真の悟入ごにゅうができたとも思われませぬ。——歩めば歩むほど、道は遠く深く、何やら、果てなき山を歩いている心地でございまする」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めて来なければ芸道の真諦しんたい悟入ごにゅうすることはむずかしい彼女は従来甘やかされて来た他人に求むるところはこくで自分は苦労も屈辱くつじょくも知らなかった誰も彼女の高慢こうまんの鼻を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宗教的な意味で絶対者に触れることあるいは絶対境に悟入ごにゅうすることは彼の問題ではない。彼が天をいうにしても、それはソクラテスのダイモンや神託ほどにも宗教的色彩を持たない。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
如何にも禅僧の遺偈を想わせるもので、死に臨み徹した悟入ごにゅうがあったようにも受取れるが、近時歴史的考証が進むにつれ、何とそれが他人の遺偈からの剽窃ひょうせつである事がわかりがっかりする。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
後年芭蕉ばしょうあらた俳諧はいかいを興せしもさびは「庵を並べん」などより悟入ごにゅうし季の結び方は「冬の山里」などより悟入したるに非ざるかと被思おもわれ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
どうして画けたか、よく自分に意識づけて一つの悟入ごにゅうとしておかないことには、平常にかえって、ふたたびこの神品が画けるか否か、自分のものでも、自信することができないだろう。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後年芭蕉があらたに俳諧を興せしもさびは「庵を並べん」などより悟入ごにゅうし、季の結び方は「冬の山里」などより悟入したるに非ざるかと被思おもわれ候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)