かん)” の例文
今は初々しくはにかんでいるこの女もたちまちかん婦に変じて私の自由を奪うだろうという殺風景な観察すら下していた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「よくそれにお目がとまりました、その辺がここでは逸物いちもつでございましょうな、牧場の方へ参ると駒で一頭、ややこれに似たかんの奴がござりまするが」
牧は特にかんと称すべき女でもなかったらしいが、とにかく三つの年上であって、世故せいこにさえ通じていたから、くみがただにこれを制することが難かったばかりでなく
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また不思議にこの捨松は馬をあつかうことが上手で、まだ年もいかない癖に、どんなかんの強い馬でも見ごとに鎮めるというので、大勢の馬飼うまかいのなかでも褒め者になっている。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
驢は荷を負うていとあらみちを行くに、辛抱強くて疲れた気色を見せず。ニービュールが、アラビアで見た体大きくて、かんの善い驢は、旅行用に馬よりもまされば、したがって価も高い由。
わたしの馬は、むく毛の若い黒馬で、脚も丈夫じょうぶだし、かんも相当つよかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「殿、この馬はかんが強すぎて私には手に負えませぬ」