いか)” の例文
圭一郎はいかつて、この侵入者をそつと毒殺してしまはうとまで思ひ詰めたことも一度や二度ではなかつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
周はますます怒って村役人を罵倒ばとうした。村役人はじると共にいかって周を捕縛して監獄へつないだ。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
長摩納父の仇を復すはこの時と利剣を抜いて王の首に擬したが、父王平生人間はただ信義を貴ぶべしと教えたるを思い出し、いかりをやすめ剣を納めた時俄然がぜん王驚きめた。
宣教師排斥はいせきが一の流行になった時代にしょして、いからず乱れず始終一貫同志社にあって日本人の為に尽し、「吾生涯即吾遺言也」との訣辞けつじを残して、先年終に米国にかれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
町子、いかりに満ちた眼でそれを見送つた後、静かにデスクに向ひ、何か書きはじめる。
ママ先生とその夫 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
まなこ其方そなたに転じたる酔客はいかれるとしもなけれど声粛こゑおごそか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
婆羅門帰ってその妻家外にあるを見、かねおしえ置いたに何故子を伴れて出ぬぞといかる。
なほも云ひつづけようとする彼女を、神谷はいかりに燃えた眼で見据ゑた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
急がず休まず一鍬一鍬土を耕し、あわてずいからず一日一日其苗の長ずるを待つ。仮令思いがけない風、ひでり、水、ひょう、霜の天災を時に受くることがあっても、「エホバ与え、エホバ取り玉う」のである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)