念誦ねんじゅ)” の例文
念誦ねんじゅをあそばすひまひまは姫君たちの相手におなりになって、もうだいぶ大きくなった二女王に琴の稽古けいこをおさせになったり、碁を打たせたり
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
参禅の三摩地を味い、諷経念誦ねんじゅ法悦ほうえつを知っていたので、和尚の遷化せんげして後も、団九郎は閑山寺を去らなかった。五蘊ごうん覊絆きはんを厭悪し、すでに一念解脱げだつ発心ほっしんしていたのである。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そんな人達が念誦ねんじゅしながら加持してくれているのを、ああまらないと思って聞き入りながら、年少の折、よもやこんな事が自分の身に起ろうなどとは夢にも思わなかったので
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
蛇は首をもたげて生贄いけにえに進み寄って来るので、汪は眼をとじて、いよいよ一心に念誦ねんじゅしていると、蛇は一丈ほどの前まで進んで来ながら、何物にかさえぎられるように逡巡しりごみした。
諷経ふうきん散華さんげなどの式のあと、さらに禅門各大和尚たちの、起龕きがん念誦ねんじゅ奠湯てんとう奠茶てんちゃ拾骨しゅうこつ、——などこもごもな礼拝が行われ、さいごに宗訢そうきん笑嶺和尚の、偈辞げじが読まれ、笑嶺が満身から
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃の懈怠けたいをお詫びしなければならないと思って、お堂へ参って、夜どおし念誦ねんじゅしていますと、ほかにもお籠りをする人たちがあって、話しているのを聞いていましたら、あゝ可哀そうに
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おもいを仏土に致し、仏経の要文なんどを潜かに念誦ねんじゅしたことと見える。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
不動使者を念誦ねんじゅして駆使せば、手を洗い楊枝ようじを取るほどの些事より、天に上り山に入るまで、即刻成就せしむ、天女をち来らしむるもたちまち得、何ぞいわんや人間界の人や物や飲食をやとあり。
十五夜の月がまだ上がらない夕方に、宮が仏間の縁に近い所で念誦ねんじゅをしておいでになると、外では若い尼たち二、三人が花をお供えする用意をしていて、閼伽あかの器具を扱う音と水の音とをたてていた。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)