いそがし)” の例文
引渡しの立合の目の廻るようないそがしさや今迄みたこともない税関の交渉なんか、何もかも生き生きしていて、頭の中へ涼しい風が吹きこんでくるようでしたわ。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
ありは甘きに集まり、人は新しきに集まる。文明の民は劇烈なる生存せいそんのうちに無聊ぶりょうをかこつ。立ちながら三度の食につくのいそがしきにえて、路上に昏睡こんすいの病をうれう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
荒尾譲介は席のあたたまひま手弄てまさぐりに放ちもらぬ下髯したひげの、長く忘れたりし友の今を如何いかにとるにいそがしかり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此際は蓬と蕨とを採るにいそがしく、日々干し面白く、働くには頗る困難なるも、創世記を読みて古今同く労苦と厄難と人害とは此れ創業の取るべきを感悟して最も満足せり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
三日の日に、この内がいそがしいから、お給仕の手伝に来たんです。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)