御神籤おみくじ)” の例文
その八五郎が、美しい下女のお菊の動静を見張っているうち、浅草の日参と、御神籤おみくじと、くめ平内へいない様の格子の謎を見付けたのです。
さては珍事じゃ大変じゃと、邸内一統煤掃すすはきという見得で騒出さわぎだし、家令はまず何はともあれ、警察へ届けて出る。御奥の老女は御神籤おみくじおろしにく。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
安産のおまもりを受けたり、御神籤おみくじを引いている人もあります。御賓頭盧おびんずるの前で、老人がその肩やひざでては自分のその処をさすることを繰返しています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
善光寺如来ぜんこうじにょらい御神籤おみくじをいただいて第五十五の吉というのを郵便で送ってくれたら、その中にくもさんじて月重ねて明らかなり、という句と、花ひらいて再び重栄ちょうえいという句があったので
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今度は鼻紙を細く引裂いてこよりこしらえ、見ちゃアいけませんよと、向むいてその端へ何やら書附け、御神籤おみくじのように振って居たが、あなたこれを結んで頂戴なその墨のついたのをよ
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
わたしは試みに一銭銅貨を入れてみると、からからという音がして、下の口から小さく封じた活版刷の御神籤おみくじが出た。あけて見ると、第五番凶とあった。わたしはそれが当然だと思った。
春の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「俺は今日浅草の観音様へ行ったのさ。思い切りお賽銭さいせんをあげて、半日拝んだ揚句、この縁談をうらなうつもりで御神籤おみくじいた——」
きょうまでゆくえの知れない以上はもう死んだものに決まっているのだが、それでも死骸を見ない以上はまだなんだか未練があるので、おかみさんは今日も浅草の観音さまへ御神籤おみくじを取りに行った。
「そう。また御神籤おみくじを引いて」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「俺は今月淺草の觀音樣へ行つたのさ。思ひ切りお賽錢さいせんをあげて、半日拜んだ揚句、この縁談をうらなふつもりで御神籤おみくじいた——」
今もお堂で御神籤おみくじを頂いたんですが、やっぱり凶と出たので……
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「奧樣が築土つくど八幡樣へお詣りに行つただけです——え、昨日でしたか、御神籤おみくじを引いたらきようが出たとかで、ひどくしをれてゐらつしやいましたした」
「その綺麗すぎる娘が、観音様にお詣りをするだけなら構わないが、必ず御神籤おみくじを引くのはどうしたわけでしょう」
「その綺麗過ぎる娘が、觀音樣にお詣りをするだけなら構はないが、必ず御神籤おみくじを引くのはどうしたわけでせう」
「あの格子に、たくさん御神籤おみくじが結んであるだろう。縁結びのまじないにされているんだ。古いの新しいの、勘定しきれないほどあるが、たった一つ変ったのがあるはずだ」
念のために、狐格子に結んであるおびただしい紙片かみきれを調べましたが、新しいのは大部分御神籤おみくじを畳んだもので、たまたま縁結びがあっても、この事件に関係のありそうなのは一つもありません。
半分ほどったのを二本、頭の方で結び合せたのは、言うまでもなくその頃の女子供が遊び半分にやった縁結びで、男女の縁に関係のあるやしろの格子には、御神籤おみくじと一緒に、この縁結びの紙片かみきれ