引退ひきしりぞ)” の例文
余は何事なるや知らざれどこゝにて目科と共に馬車をくだり群集を推分おしわけて館の戸口に進まんとするに巡査の一人強く余等よらさえぎりて引退ひきしりぞかしめんとす
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
不器用なればお返事のしやうも分らず、唯々こころぼそく成りますとて身をちぢめて引退ひきしりぞくに、桂次拍子ぬけのしていよいよ頭の重たくなりぬ。
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
戸張とばりを垂れた御廚子みずしわきに、造花つくりばな白蓮びゃくれんの、気高くおもかげ立つに、こうべを垂れて、引退ひきしりぞくこと二、三尺。心静かに四辺あたりを見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十文字に攻めたりける、四郎左近太夫大勢たいぜいなりと雖も、一時に破られて散々ちりぢりに、鎌倉をさして引退ひきしりぞ
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その一言に、双方、兵を収めてついに引退ひきしりぞいた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不器用ぶきようなればお返事へんじのしやうもわからず、唯々たゞ/\こ〻ろぼそくりますとてをちゞめて引退ひきしりぞくに、桂次けいじ拍子ひようしぬけのしていよ/\あたまおもたくなりぬ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
堀金をさして、引退ひきしりぞく。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)