常軌じょうき)” の例文
「読めておる。——しかし大丈夫かの、頼みの相手方は、常軌じょうきを逸した野武士の徒だぞ。下手へたに組んで手をまれるようなことはないか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり三年は単純であるかわりに元気が溌剌はつらつとして常軌じょうきいっする、しかも有名な木俣ライオンが牛耳をとっている
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それにしても、井関さんの今度のいたずらは、彼が井上と私との親密な関係を、よく知らなかったとはいえ、殆ど常軌じょうきいっしていると云わねばなりません。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
 四、慾の深き事、常軌じょうきを逸したるところあり。玩具おもちゃ屋の前に立ちて、あれもいや、これもいや、それでは何がいいのだと問われて、空のお月様を指差す子供と相通うところあり。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あの連中ときては、常軌じょうきにあてはまらないのだから始末にゆかぬ、即興的の感情を、即興的の行動に現わして、節制のすべを知らないんだからたまらない、全く眼がはなせたものではない」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
常軌じょうきを逸するようになって行ったので、乳人が案じるのも無理はなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たしかに常軌じょうきを逸した心理作用の支配を受けていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに犯罪には常軌じょうきいっした馬鹿馬鹿しい事がつきものです。そういうものを馬鹿にしないことが犯罪を解く者の秘訣ひけつです。……こんなことを外国の有名な探偵家がいいのこしていますよ
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、諸戸の様な、謂わば変質者を、常軌じょうきりっすることは出来ぬのだ。彼は異性に恋し得ない男ではなかったか。彼は同性の愛の為に、その恋人を奪おうと企てた疑いさえあるではないか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)