常盤橋ときわばし)” の例文
五郎次の家は、常盤橋ときわばしの近くだった。彼は突然、小次郎の慇懃いんぎんな見舞をうけて、まだ病床から起き上がれない身であったが
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常盤橋ときわばしぎわから、朱引き外の本所松阪町へ移った吉良家門内の長屋で、一角はいま、小林の許を辞して、この、じぶんの住いへかえってきたところだ。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
割下水からお城への道は、両国橋を渡って大伝馬町をのぼり、四丁め、三丁め、二丁めと本町をいって、常盤橋ときわばし御門から下馬止めへかかるのが順序でした。
汽車は鉄橋にかかり、常盤橋ときわばしが見えて来た。焼爛やけただれた岸をめぐって、黒焦の巨木は天を引掻ひっかこうとしているし、てしもない燃えがらのかたまり蜿蜒えんえんと起伏している。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
公儀御用の御筆師ふでし室町むろまち三丁目の「小法師甲斐こぼうしかい」は、日本橋一丁目の福用ふくもち常盤橋ときわばし速水はやみと相並んで繁昌しましたが、わけても小法師甲斐は室町の五分の一を持っているという家主で
……金座のほうからは常式方送役人じょうしきかたおくりやくにんが二人、勘定所からは勝手方勘定吟味役かってがたかんじょうぎんみやくが二人つきそって、常盤橋ときわばしぎわから船で神田川をこぎのぼる途中、稲荷河岸とうかんがしのあたりで上総の石船にっかけられ
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
九段坂上の燈明台とうみょうだい、日本銀行前なる常盤橋ときわばしその数箇所に過ぎまい。
洲本町物部常盤橋ときわばし
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
沢庵にいわれて、彼は原の中にたたずんだ。原のそばには常盤橋ときわばし御門からつづいている掘割の水が土の色をかして流れていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに足許あしもとは、破片といわずしかばねといわずまだ余熱をくすぶらしていて、恐しく嶮悪けんあくであった。常盤橋ときわばしまで来ると、兵隊は疲れはて、もう一歩も歩けないから置去りにしてくれという。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
先の玄蕃は何も知らぬ様子で、常盤橋ときわばし御門外まで歩いて行ったが、やがてちょっと立ち思案をしてからとある屋敷小路から三軒目の門内へツウと隠れてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)