市人まちびと)” の例文
(また、明日あすにも)という不安と虚無観が消え去らないと見えて、往来の市人まちびとの顔には、どれもこれも、落着かない色が見えていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ベンヺ ロミオ、はやう! はやげた! あれ、市人まちびとさわぎはじむる。チッバルトは落命らくめいぢゃ。狼狽うろたへてゐるところでない。とらへられたならば、領主りゃうしゅ死罪しざい宣告せんこくせう。はやちた、はやう/\!
このをとこくらべると流石さすがのブリダアの市人まちびと餘程よほど勤勉きんべんたみはんければならない、にしろラクダルのえら證據しようこは『怠惰屋なまけや』といふ一個ひとつ屋號やがうつくつてしまつたのでも了解わかる、綉工ぬひはくやとか珈琲屋かうひいやとか
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこらを往来する物売りや、工匠たくみや、侍や、雑多な市人まちびとは、ただ、今日から明日への生活たつきに、短い希望をつないで、あくせくと、足をはやめているに過ぎないのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清盛入道の飛耳張目ひじちょうもく——六波羅童ろくはらわっぱと呼んで市人まちびとに恐れられている赤い直垂ひたたれを着た十四、五歳の少年らが、なにか、平相国へいしょうこくの悪口でも演じているのではないかと、こましゃくれた眼を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)