尖鋭せんえい)” の例文
二つの相対は、過去の例でみると、かえって、多くの複数よりも、対立が尖鋭せんえい化され、なぜか、両者の吻合ふんごう的平和にはあまんじない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
技法ぎはふ尖鋭せんえい慧敏けいびんさは如何いかほどまでもたふとばれていいはずだが、やたらに相手あひて技法ぎはふ神經しんけいがらして、惡打あくだいかのゝしり、不覺ふかくあやまちをとが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
自然主義後派(内面派)が更にその尖鋭せんえいを示して来た。そして又一方では、ロマンロオランのやうな作家が出て来た。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
彼らの中の古老は気象学者のまだ知らない空の色、風の息、雲のたたずまい、波のうねりの機微なる兆候に対して尖鋭せんえいな直観的洞察力どうさつりょくをもっている。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼等は太平洋の岸辺きしべに立って、大陸からの潮風が吹き送る新日本の文明を、いつも時代の尖鋭せんえいに於て触覚していた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
兩國名物のお秀、弱い稼業の女には違ひありませんが意地も張りも、刄のやうに尖鋭せんえいになりきつて、青侍や安岡つ引に負けてゐる女ではなかつたのです。
雑沓を分けていく個人個人に尖鋭せんえいな感覚と沈着な意志とがあって、その雑沓の危険と否とに一々注意しながら、自主自律的に自分の方向を自由に転換して進んで行くのです。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ブルジョアとプロレタリアの絶対的宿命的な闘争を説くマルクス=レーニン主義はその最も尖鋭せんえいなものだが、僧侶そうりょや貴族などの中世的等族とうぞくの支配を主張するシュペングラーのごときも
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
こういう囁きは、与茂八の件を動機として、長いあいだくすぶっていたものが、せきを切るところまで来たといえるのである。主税介は下演習の終った日に、最も尖鋭せんえいな者たちを集めて戒告した。
四日のあやめ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
両国名物のお秀、弱い稼業の女には違いありませんが意地も張りも、やいばのように尖鋭せんえいになりきって、青侍や安岡っ引に負けている女ではなかったのです。
煙や火の元子は尖鋭せんえいな形をもっているが、もつれ合ってはいないと言っているのはよくわからない。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
江戸の人心を攪亂かうらんし、謀叛を企てて徳川幕府を倒さうとしたことがあり、毒藥に對する幕府の神經は、火器に對する場合に劣らず、想像以上に尖鋭せんえいになつてゐた時でもあつたのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ガラッ八は尖鋭せんえいなカンを働かせるつもりで、しきりに鼻をヒョコつかせております。