小壜こびん)” の例文
彼は傷ついたはとのごとく、ややもすると狭心症の発作に悩まされがちなので、常住ポケットにジキタリスの小壜こびんを用意することを忘れなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
引出しが一つ一つ、ヒョコヒョコ脱け出して飛行機の操縦のようなことをすると、中に入っていた洋紙ようしや薬品の小壜こびんなどが、花火のように空中に乱舞する。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
涼しい食物のさらが五つ六つ並んで、腹の減った小初が遠慮えんりょなく箸を上げていると、貝原はビールの小壜こびんを大事そうに飲んでいる。ぽつぽつ父親のうわさを始めた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
少しいたんだ床板と、小壜こびんやチュウブや画筆なぞを載せた、窓下の荒削りなテエブルと、壁紙なしの壁にかかった、額縁のない習作とを、遠慮なく照らしていた。
今度は何の料理が来るかと待つ処へ料理はきたらで下女がく小さなコップと美麗なる小壜こびんを持来りぬ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼は、ふとウィスキイの小壜こびんがトランクの中にあることを思い出した。それを、飲ますことが、こうした重傷者に何う云う結果を及ぼすかは、ハッキリとわからなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
西洋酒の一リットル入りばかりの小壜こびんであります。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、竹見は、気が気でないが、相手の病院では、一向うごく気配けはいがない。でも、最後の一軒で、ようやく蛇毒じゃどくを消す塗薬ぬりぐすり小壜こびんに入れてもらうことができた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)