対岸むこうぎし)” の例文
旧字:對岸
昨夕もよ、空腹を抱えて対岸むこうぎしのアレシキに行って見るとダビドカの野郎に遇った。懐をあたるとあるから貸せと云ったら渋ってけっかる。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つとめて起き、窓おしあくれば、朝日の光対岸むこうぎしの林を染め、微風そよかぜはムルデの河づらに細紋をゑがき、水に近き草原には、ひと群の羊あり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すると今度は反対の岸——二百間あまりもかけ隔てた対岸むこうぎしの方からかすかに幽かに同じ唄声が水を渡ってラシイヌの耳へまで聞こえて来た。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水車のある処で鈎を下していると、ちいさ端艇ボートが岸にあるのに気が付いた。誰も見ていないから、乃公は此端艇を借りて、対岸むこうぎしへ行こうとした。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あとでまたわたしを越えなければならない路ですがね、橋から見ると山の位置ありかは月のる方へ傾いて、かえって此処ここから言うと、対岸むこうぎし行留ゆきどまりの雲の上らしく見えますから
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つとめて起き、窓おしあくれば、朝日の光対岸むこうぎしの林を染め、そよ風はムルデの河づらに細紋をえがき、水に近き草原には、ひと群れの羊あり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
何でうしたのか、みんな対岸むこうぎしまで凧糸を射た。すると対岸の人が其を手繰たぐる。凧糸に太い綱を結んで、又手繰る。とうとう乃公の頭の上から両岸へ掛けて、綱の一本橋が出来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)