宿酔しゅくすい)” の例文
旧字:宿醉
それが今日は生憎あいにく早暁そうぎょうからの曇りとなった。四方よもの雨と霧と微々たるしずくとはしきりに私の旅情をそそった。宿酔しゅくすいの疲れも湿って来た。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
微風は彼の頭から、すぐさま宿酔しゅくすいを吹き払った。彼は両腕を胸に組んで、谷川の向うにそよいでいる、さわやかな森林のこずえを眺めた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
居室の脇息にった姿も、いささか宿酔しゅくすい気味にみえる。外の花の梢は、ことごとく一夜に衣更えした感で、急に茶みどりの吹キ芽が目につく。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともかくも、城の内外を疎略のないようにしておかなければならないというのが、新年の宿酔しゅくすいの覚めないうちから、急に支配以下が働き出した理由なのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小生が只今宿酔しゅくすいから醒めまして、死期の近い事を覚悟致しております気持ちの、異様に澄み切った遥か遥か彼方に、その嬢次の姿が立っておりまして、まだ見ぬ父母を恋い慕いつつ
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
葉子はいつものとおり知らんふりをしながら、そこらに散らばっている手紙の差し出し人の名前に鋭い観察を与えるのだった。倉地は宿酔しゅくすいを不快がって頭をたたきながら寝床から半身を起こすと
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
宿酔しゅくすいの苦しい意識を辿たどって、ぼんやりと考えてみると、ゆうべ、ごまの蠅の四郎次をつれてこの家へあがると、隣り座敷に混沌こんとん詩社の若い詩人たちが来合せて
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まだ幾分か、宿酔しゅくすいの眼まいを感じるらしく、ふら、ふら、と御手洗みたらしの方へあるいて行った。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿酔しゅくすいの乾いた唇をめながら、内蔵助は起き上って
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)