宗匠頭巾そうしょうずきん)” の例文
そのときの上野介は宗匠頭巾そうしょうずきんをかぶった好々爺こうこうやで彼は道で、すれちがう誰彼の差別もなく、和やかな微笑をたたえて話しかけた。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
従来の説明を一挙にくつがえしたのは、宗匠頭巾そうしょうずきんをかぶって、十徳じっとくを着た背の高い老人。やや離れたところに立っておりました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宗匠頭巾そうしょうずきんをハネ飛ばして、尻もちをついた好色隠居は、それがお蝶の羞恥しゅうちではなく明らかな憎悪ぞうおの反抗だと知ったので、にわかにムッとなって飛びかかって来る。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人の宗匠頭巾そうしょうずきんの、でっぷりした、黒い十徳じっとくすがたの老人と、それに並んで、いくらか、身を退しざらせている、限りなく艶麗えんれいな、文金島田の紫勝ちないでたちの女性とを見る。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
宗匠頭巾そうしょうずきんを片手に握り締めて、しきりに坊主頭を振り立てながら、懸命に手招てまねぎする恰好が、どうも尋常でない。まんざらいつもの悪ふざけとも思えないから、不審ふしんを打った大迫玄蕃が
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……次に梅川から持って来た包をひらいた、つむぎのこまかい縞の単衣ひとえに、葛織くずおりの焦茶色無地の角帯かくおび印籠いんろう莨入たばこいれ印伝革いんでんがわの紙入、燧袋ひうち、小菊の紙、白足袋に雪駄せった、そして宗匠頭巾そうしょうずきんなどをそこへ並べた。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
頭に宗匠頭巾そうしょうずきんのようなものをいただき、身には十徳じっとくを着ていましたが、侍が一人ついて、村人らしいのを二人ばかり連れて来て、お墓の掃除をさせている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宗匠頭巾そうしょうずきんの老人とか、医者とか、僧侶とか、町人の旦那衆と云ったような者ばかりが、ひっそりと、墨のの中に集まって、各〻めいめい、筆と短冊を持ち、しわぶきもせずに俳句を作っているのだった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とんぼあたまの子供をおぶった近所のおかみさん、稽古けいこ帰りのきいちゃんみいちゃん、道具箱を肩に、キュッと緒の締まった麻裏をつっかけた大工さん、宗匠頭巾そうしょうずきんの横町の御隠居、肩の継ぎに
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)