嬌笑きょうしょう)” の例文
喧嘩渡世の看板に隠れ、知らずのお絃の嬌笑きょうしょうきもたまを仲に、ちまた雑踏ざっとうから剣眼けんがんを光らせて、随時随所に十七人の生命をねらうことになった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その信長の声のする所、外にはせんかんと庭園の泉流せんりゅうがせせらぎ、向う側の幾坊のむねからは、折々、明るい女性たちの嬌笑きょうしょうが風に送られて来た。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤いくちびるの嬌笑きょうしょうが大合唱となって、峰から峰へとこだまし、全世界が途方もない笑いのうず巻きに包まれていった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そういう手工しゅこうにも姉は器用であった。あの鹿鳴館に貴婦人たちが集って、井上外交の華やかさを、その繊手せんしゅ嬌笑きょうしょうとをもって飾った時代である。有名なのは夜会の舞踏であった。
辻博奕つじばくちだの、みだらな女たちの嬌笑きょうしょうだの、あかん坊の泣き声だの、放下師ほうかしつづみだの、そのほか識別しがたい臭気と物音が、耳の穴へ混み入ってくる。
る時は、むせ返る酒場の喧噪けんそうの中に、妖女は透き通るからだを酔いの桃色に染めて嬌笑きょうしょうするであろう。
「悪霊物語」自作解説 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
框に足を掛けると、うれいを含んだ女の眼にあざやかな嬌笑きょうしょうが流れた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)