いと)” の例文
ところが、ロメーンズは、豕の汚臭はもとその好むところにあらず、ただこの物乾熱よりも湿泥を好み、炎天に皮膚の焼かるるをいとうて泥に転がる。
かつて学校の窓で想像した種々さま/″\の高尚な事を左様さういつ迄も考へて、俗悪な趣味をいとひ避けるやうでは、一日たりとも地方の学校の校長は勤まらない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いとわしい妻が妊娠した、というだけでも恐ろしいことです。而もそれは悪魔の種なのです。私は決心しました。早く妻を殺して此の恐ろしさから逃れよ、と。
悪魔の弟子 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
時をいとわぬこの殿の行動に、近侍たちはあわをくって、うまやへ駈け、馬場へ追いかけ、それでも
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骨折りをいとうのではない。居たたまらなくなっているのは、もっとほかの事情だ。どんなに酔って帰っても、シヅは早く起きだして、仕事をさがしに出るサト子のために、食事をつくってくれる。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
えたけるのを、小六は、耳にいといながら、手についている鉄砲を、ひじへ上げて云った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)