かみ)” の例文
紀州きしうの山奥に、佐次兵衛さじべゑといふ炭焼がありました。五十の時、かみさんに死なれたので、たつた一人子の京内きやうないれて、山の奥の奥に行つて、毎日々々木をつて、それを炭に焼いてゐました。
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
戻って柳橋の袂を往復ゆきかえりして、淡紅色ももいろ洋脂ぺんきが錆にはげた鉄欄の間から、今宵は神田川へ繋り船のかみさんが、桶をふなばたへ載せて米を磨いで居る背中に、四歳よっつばかりの小児こどもが負われながら仰反のけぞって居るのを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)