妙齢みょうれい)” の例文
旧字:妙齡
これがR事件の最初の一頁ページなのであるが、それは白昼華やかな銀座街の鋪道ほどうの上で起った妙齢みょうれいの婦人の怪死事件から始まる。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妙齢みょうれいになってしかも人並みすぐれて美しい娘を父親が人前でおさるおさると呼び立てた、というのである。その結果がどうなったかは忘れてしまった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ははあ、又腫れましたな。これでは多少痛みましょう。扁桃腺炎ばかりでなく、俗にいうお多福風たふくかぜです。妙齢みょうれいの婦人としてはお気の毒なお顔になりました」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
食う時はさもしそうに見え気の毒な感じをもよおすものであるまして妙齢みょうれいの美女の盲人においてをや春琴はそれを知ってか知らずか佐助以外の者に飲食の態を見られるのを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夜も日も泣きはれた眼をしていて、笑いざかりの妙齢みょうれいを、笑顔一つ見せなかったものだが、いつか城中の人々にもつき、秀吉のらいらくな調子にもアヤされ、三人の姫はみな、秀吉を
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妙齢みょうれいの婦女子の懺悔ざんげを聴き病気見舞と称する慰撫いぶをこころみて、心中ひそかに怪しげなる情念に酔いしれるのを喜んだ。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この分で進むと今にネクタイぐらいに縮まってしまうかも知れない。游泳の伝授にかこつけて斯ういう理解のある妙齢みょうれいの女性をキャッ/\と言わせること——それは夏場情調の一つである。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
誰でも経験することであるが、人通りのない暗い夜路などを行く時、たま/\美しい妙齢みょうれいの女の一人歩きをしているのに出遇うと、男の人に出遇ったよりも却って無気味な恐怖に襲われる。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひとりのめいを娘として育てて来たのが、ようやく妙齢みょうれいとなったので
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
防空監視員と云っても、完全な男子は出征して国内には居なかったので、四十過ぎの中老組か、二十歳以下の少年か、さもなければ、血気盛んなる妙齢みょうれいの婦人達であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妙齢みょうれい淑女しゅくじょがまさか座敷へ腹這いになって豆を拾う次第わけにも行くまい。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その敵国人というのは実は妙齢みょうれいの婦人であって、多分御察しのとおり此の恐ろしい団体に加わっている人の妻君である。彼女は夫について到頭とうとうこんなところに来てしまった。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)