妓女ぎじょ)” の例文
当時、京都には、妓王、妓女ぎじょと呼ばれる、白拍子しらびょうしの、ひときわ衆に抜きん出た姉妹があった。その母も刀自とじと呼ばれ、昔、白拍子であった。
面白いことにはその歌の半数以上が、みねを隔てた長久保ながくぼ新町しんまちあたりで、妓女ぎじょの歌っていた都々逸どどいつの文句であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今でも西蔵チベットその他の未開国には一婦多夫と女の家長権とが古代のおもかげのこしている。文明国においても娼婦しょうふ妓女ぎじょのたぐいは一種の公認せられた一婦多夫である。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
さかずき持つ妓女ぎじょ繊手せんしゅは女学生が体操仕込の腕力なければ、朝夕あさゆうの掃除に主人が愛玩あいがん什器じゅうきそこなはず、縁先えんさきの盆栽も裾袂すそたもとに枝引折ひきおらるるおそれなかりき。世の中一度いちどに二つよき事はなし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そのうちでも妓女ぎじょに対しては一糸を着けざる赤裸あかはだかにして、その身体からだじゅうを容赦なく打ち据えるばかりか、顔の美しい者ほどその刑罰を重くして、その髪の毛をくりくり坊主にり落すこともあり
妓女ぎじょではありません」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人のいやがる小説家と世の卑しむ妓女ぎじょとの野合やごう、事々しく通知致されなば親類の奥様や御嬢様方かへつて御迷惑なるべしと察したればなり。然れども世は情知らぬ人のみにはあらず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
長崎にはくして妓女ぎじょに親しみ、この事を小説につづりて文名を世界にせしめき。もしロッチをして日本帝国の軍人たらしめんか風紀問題は忽ち彼をして軍職を去らしむるに終りしならん。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)